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オタクなウェブ屋の視点で捉えたNFTアートの現状と課題

読了目安時間:14分

ウェブ屋のオタクによる「NFTアートって何なのよ」という話。独断と偏見による長文です。ご容赦ください。

こんにちは、こんばんは、おはようございます。 いつも本業と格闘している利鷹です。

 

ところで先日、私がいないところで弊社のボスが「メタバースとかWeb3.0って利鷹の専門やんな^^」みたいに話していた……と小耳に挟み、白目をむいています。ウェブサイト作れる人間はとりあえずテクノロジーに関する話題全部に通じていると思われるよね。分かるけどつらたん。

 

とはいえ職務柄、アンテナ張ってないといけないのは確かなわけで……社内でも話題にのぼるわけで……

そういう理由で、巷を騒がせているアイツ、NFTについて調べる機会があったので、その内容をざっくりオタクなウェブ屋視点で語ろうと思います。

目次

NFTとはナニモノなのか

NFT(Non-Fungible Token)は日本語では『非代替性トークン』と表現されます。

……うん、「非代替性」も「トークン」も日常生活ではあまり聞き慣れない(もしくは聞いていてもイマイチ意味がわからない)単語ですよね。少なくとも私の周りはそうです。

仕事柄「トークン」は馴染みのある単語ですけど、プライベートでトークンなんて使ってるのはギークとか投機関連の情報おっかけてるひとくらいじゃないの……どうかな……。

とまあ不明瞭な話はさておき。

 

「token」という単語には色々な訳があります。「象徴」だとか「兆し」だとか「記号」だとか、辞書にはイメージしにくい言葉ばかり並んでいるのですが、ウェブ上で使われる「トークン」は大体「データ」と置き換えても問題ないと思います(多分)。もしくはずばり「仮想通貨」。多分ウェブ上ではどちらかのニュアンスで使われていることが多いはずです。

(なんとなく『本来そこに出るべきものの代わりに出ているもの』という意味合いを表す語なのかなーという印象を抱いています。というのは余談です。フィール、ドントシンク。)

さて。NFTの「トークン」を「データ」に置き換えてみましょう。すると「非代替性データ」ということになります。

 

「代替性」というのは、代替が用意しやすいことを指す表現です。

 

ですので「非代替性がある」「非代替性が高い」という表現になれば、「代替を用意できない」「代替を用意しにくい」……すなわち希少であるということを表す言葉になります。

つまり、NFT(非代替性トークン)をもう少し分かりやすく言い換えるなら「希少性の高いデータ」ということです。

……恐らくこの表現は、長年ネットに慣れ親しんできた方ほど頭に疑問符を浮かべるはずです。

はたして「希少性の高いデータ」というのは存在しうるのか?

デジタルなデータは非代替性を持ち得るのか

「非代替性が高い」=「希少性が高い」というのがどういった状態を指すのか、デジタルデータよりも現実世界の事例を挙げた方がおそらく分かりやすいんじゃないかと思います。

 

例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチとアンドレア・デル・ヴェロッキオの作品とされる有名な絵画、『受胎告知』。美術や世界史の教科書などに印刷されたものを見たことがある人は多いはずです。 ふたりが描いた『受胎告知』は複製され、印刷され、多くの人に影響を与えてきた、価値あるコンテンツのひとつでしょう。しかしそんな「コンテンツ」としての価値とは別に、世界でただひとつ、ふたりが実際に手がけた原画だけが持つ価値がある。フィレンツェのウフィツィ美術館が所蔵する、ただひとつの絵画のみが、「本物の『受胎告知』」である。……非代替性がある、というのはこういう話です。

アートの原画やプレミアのついた骨董品、土地などの不動産が分かりやすく非代替性があるモノの代表です。概念的に解釈すれば替えのきかないスーパースターも非代替性が高いといえると思います。

 

このように実在しているアナログな物事に限れば、非代替性という考え方はわかりやすいものです。しかしデジタルデータの世界に持ち込むと、途端に話が分かりにくくなります。なぜならデジタルデータは、まったく同じものを容易く複製することができるから。

 

簡単に複製できるというデジタルデータの特徴は、テクノロジーの進歩を速めるのには大きく役立ちますが、一方で希少性を保つという考え方とはとにかく相性が悪い。コピペの便利さを知る方なら、デジタルデータの希少性を保つことの難しさも想像しやすいのではないでしょうか。

 

だがしかし。 だからといって「デジタルデータに希少性は持てない」と言い切って良いものなのか。

 

例えばペンタブやiPadといった機材を用いて、ピカソやゴッホ、葛飾北斎のように素晴らしい作品を創造するアーティストがいるとします。その人の作品は従来のアート作品と同様、社会や人々に大きなインパクトを与えている。だけどその人の作品はデジタルデータで作られたものだから、非代替性はないに等しい。故にその人の作品には先人たちの作品のような価値はない。……と言い切られると、趣味とはいえ創作に関わる人間としては、ちょっと首を傾げてしまいます。

 

デジタルデータの非代替性の低さは、芸術・アート以外の領域でも問題視されることがあります。複製しやすいということは、つまり改ざんも容易であるということです。紙にインクで書かれた帳簿の改ざんは中々手間ですが、デジタルデータであれば簡単に書き換えることができます。複製をしやすくすればするほど、データの正当性を維持することは難しくなっていくものです。

 

デジタルデータに非代替性をもたせられないか、改ざんを防ぐことができないかという話は、(そういう用語を使っていたわけではありませんが)わりとネット界隈では昔から話されていた印象があります。オタクであれば「ネットにアップロードしたイラストをパクられないようにするにはどうしたら良いか」なんて話を聞いたことある方も多いはずです。それ、つまり非代替性の話なんだわ!

さて。

話は変わりますが2008年、正体不明の謎の人物が、ネット世界を変える論文を発表しました。

 

サトシ・ナカモト。電子通貨ビットコインの生みの親です。

 

ちなみにマジで正体不明の謎の人物、日本人名を名乗ってるけど本当に日本人かも定かではなく、未だにどこの誰なのか分かってないよ。誰なのか分からないのにハンガリーに銅像が立ってるぞ。事実は小説より奇なりみたいな存在だ。

 

閑話休題。

 

サトシ・ナカモトがビットコインを作るにあたって発明したのが、ブロックチェーンと呼ばれる技術です。

ブロックチェーンとは何なのか、検索すると色々な説明をしているサイトがヒットします。技術的な説明はそちらに任せるとして、わかりやすく説明をすると「データが取引によって誰の手に渡ったのかという情報を蓄積していく技術」です。

 

たとえばAさんが持っていたデータをBさんが買い取り、さらにその後そのデータをCさんが買い取ります。するとそのデータには「AさんからBさんへの取引→BさんからCさんへの取引」といったように、取引の履歴がどんどん蓄積されていきます。つまりデータの所有者がAさん→Bさん→Cさんと移り変わっていることが蓄積された履歴から読み取れます。

 

誰から誰へデータが渡されていったのか、鎖状につながったその履歴情報をもとに、そのデータが改ざんされていない正当性のあるものかどうかをチェックする仕組みになっています。つまりその取引情報の履歴を以て、そのデータが改ざん・コピーされていない唯一のものであるという担保をしているのです。

 

……つまり、ブロックチェーンは非代替性をデジタルデータに持たせる技術なわけです。

そのデータがどのような取引を経て、だれの手に渡っていったか。 その履歴情報を以て、デジタルデータの非代替性を証明したものこそがNFTです。

 

つまりNFTについてもう少し精度を上げた説明をすると、「ブロックチェーンを組み込むことによってデータ所有者の変遷を記録し、その履歴情報を非代替性の証明としたデータ」ということになります。そしてイラストや音楽、動画などのデジタルアートにブロックチェーンを組み込んだものはNFTアートと呼ばれます。

(これは補足ですが、ここでやりとりしているのは「データ」の所有権であって「コンテンツ」の所有権ではありません。「データ」を購入しても著作権を持つのはクリエイター側であり、「データ」を所有してもそれを商用利用はできません。やはりアナログイラストでいうところの原画販売のイメージが一番近いですかね。さらにいうと現行の法的にはまだ「データ」への所有権を主張できないはずなので、このあたりは法整備を期待したいところです。)

NFTアートの課題

ブロックチェーンによってデジタルアートに非代替性を持たせることができた! やったー! これでデジタルアートのクリエイターも万々歳! となればよかったんですが、現実は非情である。

NFTアートは様々な問題が指摘されています。

先程補足で上げた通り法整備が間に合っていないため、NFTアートの売買が現実の美術品売買のような根拠を持つことができるのか等がまだ不明瞭であること。

基本的に仮想通貨での取引となるため、仮想通貨にまつわる課題がそのままNFTアート売買の問題として浮上すること。

アート売買としてではなく投機対象として捉えている層が大半である一方、アートとしての価値を鑑定するための文脈や体系が育っておらず、価格設定がかなり個人の裁量に依っていること。(例えばクリエイターが五千円で売り出していたものを、購入した誰かが十万円で売りにだすとかも普通に有り得ます。二次流通でもクリエイターに売値の数%分くらいは利益が入るので、それでOKと取るか、いいやクリエイターの搾取だととるかは人によりけりな気もしますが……)

 

出るわ出るわ問題点。どのくらいのインパクトかは分かりませんが環境問題に言及する指摘もあります。

とにかく色々な問題が指摘されているのですが、オタクとして特に気になるのが下記の問題。

NFT化されたアートが、本当に第一保有者(=クリエイター)の作品であるかを審査する機構が存在していない。

すなわち、盗作・贋作(いわゆるパクり)かどうかの判別が、かなり難しい。

 

たとえばクリエイターがTwitterでアップしたイラストを見知らぬ第三者がダウンロードして、勝手にNFT化してしまうとします。クリエイター側がそれを把握する術は見つけるか教えてもらうかするくらいしかなく、プラットフォーム側も真偽の判断が難しい。自分の描いたイラストが見知らぬ誰かのNFTアートとして売買されるという可能性が大いにある。実際にそういった事例はすでに結構な件数起こっていて、NFTアートへの忌避感情を育てる一因になっていると感じています。

 

そう。たとえブロックチェーンで非代替性を持たせたところで、盗作・贋作問題はクリアされないのです。大体の画像は右クリックでダウンロードできますし、右クリック禁止のスクリプトを入れたところでスクリーンショットを撮ってしまえばコンテンツの複製自体は安易にかなう。

NFT売買プラットフォームのいくつかは、審査をクリアしたクリエイターのみが一次流通に乗せることができるという仕組みになっていますが、それも絶対ではありません。

 

結局非代替性があろうがなかろうが、パクりとの闘いはクリエイター永遠の課題なのです。

 

…………つまりクリエイターは、今までのパクり対策だけではなく、NFT化されないようにというプラスアルファのパクり対策が必要になるわけですねェ!!!!

盗作・贋作対策という観点から見たNFTアート

もしかしたら今後、技術の発展、市場や法の整備が整うなどの理由で盗作・贋作が根絶することもあるかもしれません。が、多分無理だろうな! というのが利鷹の見解です。

 

だって現実の美術品でさえ盗作・贋作が存在しているのです。同じように取引されるとなれば、NFTアートもそのターゲットとして狙われるのは当然といえば当然です。

 

それじゃあどういうふうにNFTと付き合えば、盗作・贋作を防ぐことができるのか。 その他の問題は一旦脇において、パクられない(パクられても、これはパクリだと主張することができるようにする)ためのフローチャートを考えました。

 

フロー①:作品の著作権を不特定多数に主張できる環境をつくる

まずは「このコンテンツは私が作ったものだ」と分かりやすくしておくことです。

イラスト等にサインを入れるのも基本ですが、ポートフォリオサイトを作る、SNSで自分の作品群をまとめるなど、作品を一覧できる場所があるとベターです。誰かがそこを見たときに、「この作品群の作者は○○という人間だ」と明確に分かるようにしておけば、パクられた時に著作権の主張がしやすくなります。

フロー①を踏まえた上で、パターンAかパターンBのどちらかに進みます。

フロー②-パターンA:自分の作品はNFT化していないと明言する

自分は絶対にNFT化しないと定めて、その旨を著作権と同様、周囲にはっきり明言することです。 そうすれば誰かが勝手にNFT化しているのを誰かが見つけたとしても、それが盗用であることがはっきりします。

①の状態をきちんと準備している状態であれば、プラットフォーム側に申し立てをすることでデータを非公開にしてもらえるはずですし、そこから訴訟沙汰に持ち込むこともできるでしょう。 NFT化しないという基準を明確に提示し、他の人が盗作か否かを判断できるようにしておくのです。

フロー②-パターンB:自分で先に作品をNFT化し管理する

他のやつが登録するまえに!!!! 自分で登録するんだよ!!!! というパワープレイです。 そして①で準備した場所で、自分のNFTアートがどこのプラットフォームにおいてあるのか、明確に提示することです。

こうしておけば作者が指定した場所のNFT以外はすべて盗用であると判断することができるはずです。さらにいえば作者しか持っているはずがないデータをNFT化することで、より著作権を主張しやすくなるはずです。

フロー③:パクられたら法的に戦う覚悟をする。

①・②をやってそれでもパクられるなら、もう実力行使に出るしかありません。オタクの事情に詳しい弁護士を探して、著作権侵害などで訴える。

 

どう考えても③は体力が必要なので、個人のクリエイターとして現実的なのは①と②のA/Bどちらかの手段を取っておくぐらいが現実的じゃないかな、と思います。

 

と。

いうわけで。

 

一次創作のラスト品をNFT化
おまけのように販売開始しした!!!!

 

NFTアートの売買はまだまだ課題も多く、法整備も整っていないカオスな界隈です。 だけどNFTは人間の善性を以て運用できれば、クリエイターにとって悪いばかりのものではないはずです。まだ灰色の市場だからこそ、創作オタクの端くれとして、ウェブ界隈で生活している者として、なんとか明るい方向に進んでいくことを願いながら、実験台になることもコミでNFT化に踏み切りました。今後も順次登録予定です。

というわけで、リンク先のNFTアートは間違いなく利鷹のNFTアートです。

下記リンク先以外に利鷹の作品がNFTアート化されていたらメールフォームでご一報ください。

新しいもの好きのオタクがまた何か始めたぞ、という感じでご覧いただければ幸いです。 どうぞよろしくお願いいたします!

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