21年目に書き散らかす、BUMP OF CHICKENへのひとりごとファンレター

完全に歳がばれる案件なんですが、私がBUMP OF CHICKENを初めて聴いたのは中学1年の時でした。

友人の家で、「良い曲だったから聴いてよ」とCDラジカセでかけてくれたシングルが『ダイヤモンド』だった、というのが最初の最初。余談ですが、かけっぱなしでお喋りをしていたところに突然隠しトラックが流れてきて、その存在に気づいていなかった友人と二人大騒ぎした記憶があります。懐かしい。

嗚呼遠き日々、BUMPが好きだと言えば大体「DA PUMP?」と聞き返されていた中学時代。当時『UMP』で終わるふたつのグループを差別化できるほど田舎にBUMPは浸透していなかったし、私はおおよそDA PUMPを聴くような人間とは思われていませんでした(そしてそれは正しい)。なぜ利鷹の口からDA PUMPの名前が? という感じの顔をされていました。閑話休題。

おそらく私は、それなりに年季の入ったBUMPファンなのだと思います。

中1からファンということはつまり、利鷹の名前で活動を始めるより前からBUMPファンだったことになります。オンオフ問わずことあるごとにBUMPが好きだと言い続けたお陰で、BUMPがタイアップ曲を発表すると大体誰かが教えてくれるようになりました。有難うございます。「相変わらずだなBUMP OF CHICKEN」とニコニコしながら聴いています。

ところで私は実のところ、BUMPのタイアップ曲についてはそれほど熱心に聴き込んでいなかったりします。

正確に言うと、数あるタイアップ曲とそれ以外の曲で聴く時のスタンスがかなり異なっているため、他の曲と同じテンションで聴くことができない、という感じです。BUMPはタイアップとなると……例えばアニメの主題歌として起用されたら、ほぼ間違いなくその原作やシナリオを読み込んできているはずです。オタクよ天晴なり。そう思うほど、登場人物の誰かを歌い上げるのがべらぼうにうまい。ゆえに、原作知識の有無で聴く姿勢が随分と変わってしまう。

私はポケモンやドラえもん、血界戦線とのタイアップ曲は両手を叩いて笑っていましたが、履修していない作品のタイアップについては判断留保、という感じでぽんやりと聴いています。作詞作曲・ボーカリストの藤原基央という人間がその作品をどう読んでいるのか。それを楽しむのが鑑賞の主旨になっているからです。ちなみにTOAについては地獄を生んだ主犯の一角だと思っているぞ。あと『アルエ』についてはちょっとどうかと思うよ。あれは綾波夢小説でしかないよね???

BUMPの影響を受けたと語っている米津玄師が『LEMON』や『感電』などのドラマ主題歌で視聴者を殺しにかかっているのも何となく分かる気がします。これも余談ですが、彼がBUMPの楽曲を初めて聴いたのはFLASH動画がきっかけだそうで。彼もまた毅きオタクである。 私が米津玄師を違和感なく聴きはじめられたのは、コンテンツと楽曲の関係の持たせ方だとかがBUMPに似ているなと思ったからです。それ以外についても、少し似ているなあ、と感じるわけですが。

私は、一部のBUMP楽曲を「BUMP明るい残酷物語」と呼んでいます。

おそらく私と同年代の人間にとって一番「BUMPらしさ」を感じるのは、2002年に発表された3rdアルバム『jupiter』の楽曲。『天体観測』や『ハルジオン』『ダンデライオン』などの同年代の間では比較的有名な楽曲が並びます。

それより前に発表されていた1st アルバム『FLAME VEIN』と2ndアルバム『THE LIVING DEAD』には『ガラスのブルース』や『アルエ』『ラフメイカー』『K』『Ever lasting lie』などなど。

おそらくこのアルバム3枚の楽曲群が、当時『天体観測』でBUMPを知った人間が聞き覚えのある楽曲です。

次に4thアルバム『ユグドラシル』が発表されたのは2004年。『jupiter』から『ユグドラシル』までの間に発表されたシングルは3枚。私はJ-POPに詳しくないので体感でしかありませんが、当時このペースでの楽曲発表はかなり遅い部類でした。ファンを公言していた私は度々「BUMPっていま何してるの?」とたずねられましたが、『スノースマイル』『ロストマン/sailingday』の後は「何してるんだろうねえ」と答えてばかりでした。私には雑誌などでアーティストの情報を追いかける習慣がありませんでしたし、あの頃のBUMPは活動休止してんのかと思うくらいCDが出なかった。BUMPはベーシスト以外いままで活動休止したことがないはずですけどネ!

(お陰で「活動休止を発表するグループは親切だな……」と思うようになったし、半年で活動復帰するグループを見ると「半年のために活動休止を宣言しなきゃいけないのか……大変だな……」と思うようになりました、どういうことなの。活動休止の1年前に告知してくれるグループとか優しいなって思う……)

そんな状態で発表された4thアルバム『ユグドラシル』前後の時期こそが、「BUMP明るい残酷物語」芽生えの時だったと勝手に考えています。

『オンリーロンリーグローリー』『sailing day』などの明るい曲や『embrace』みたいなどストレートなラブソングといっしょに収録されている、『乗車権』や『レム』『同じドアをくぐれたら』『太陽』。これらの楽曲が(私の周囲では)鬱曲と呼ばれがちでしたが、私が一番「うわぁ」と感じていたのは『ギルド』という曲でした。

多分この曲は、藤原基央も思い入れが強い曲なんだろうと思います。なにせその後、人形劇DVDまで作っているから。この『ギルド』という曲はなんというか、今までの曲に比べると様子がおかしかった。

曲調はいっそ明るい。明るいし、通して聴けば成程、前向きな曲なんです。なのになんだろうこの、ざわざわする歌詞。『人間という仕事を与えられてどれくらいだ』『汚れちゃったのはどっちだ 世界か自分の方か』『それも全て気が狂う程まともな日常』。

明るいし前向きなのに、歌詞で歌い上げる、どうにもならなさ。暗い歌詞を暗い曲調で歌い上げた曲よりよほどグッとお腹にクる。当時はちょっと受け入れがたくて、しばらく聴くのを遠ざけていたぐらいでした。

以降BUMPはしばらくアルバムを出しませんでしたが、シングルの発表は以前より多くなりました。前述の人形劇ギルドもこの時期に発表していて、「すげえ、BUMPが活動してる!!」と騒いでいた記憶があります。加えてTOAの主題歌『カルマ』をきっかけにタイアップ・主題歌起用がじわじわ増えていき、「BUMPがちゃんと稼いでいる……!」と感動さえしていました。

この時期のシングル楽曲はタイアップ系や『メーデー』『東京賛歌』などの明るい曲がメインで、だから『ギルド』のぞわぞわとした感じを、一旦は忘れつつあったんですよ。ねえ。

5ndアルバム『orbital period』で、言葉を失うことになるなんて思わないじゃん、ねえってば!!!!!

『才悩人応援歌』! 『ハンマーソングと痛みの塔』! 『ひとりごと』! こんな明るい残酷物語を畳み掛けるやつがあるか!!!!!! そしてついでにその切り口で世界を見てるやつが歌う『飴玉の唄ラブソング』とか重すぎてドキドキするぞ!!!!! なんだこれ!!!!!

『orbital period』は、『ギルド』で感じた「どうしようもないしどうにもならないけど明るくて前向き」という、普通の人間の逃げ場をなくす楽曲を畳み掛ける、やっばいアルバムだったんですよ。逃げ場はないぞ、でも大丈夫だよ、進もうぜ。そんなスパルタンな応援ソングがこれでもかとぶち込まれた、あまりに完成されたアルバムでした。

BUMPにどっぷりハマり込んだのはこの『orbital period』からでした。そしてこのアルバムをきっかけに過去の楽曲も一部聴き方が変わりました。『ホリデイ』とか『オンリーロンリーグローリー』も大概じゃんこれ!!!! ていうかこの「逃げ場はないぞ、でも大丈夫だよ、進もうぜ」の前提で明るい楽曲聴くと冷や汗だらだらでるぞ。この退路を自分で絶ちまくった状態で歌ってるの? 正気か? 正気だな、知ってた!!!!!

そんな調子でBUMPの情報が出るたびに悲鳴を上げていた大学生時代。そしていよいよやってくる2010年。「BUMPが『みんなのうた』に楽曲だすよ、二ヶ月連続でシングルだすよ」。そんなん怯えるに決まってるじゃん。CD出るじゃん。聴くじゃん。

おいこら待て、BUMPっていうか藤原基央。

『みんなのうた』視聴者層にどんな覚悟決めさせる気だ???

採用された『魔法の料理 ~君から君へ~』、ごくごく普通のおうちのお話なんですけどね。

『期待以上のものに出会うよ でも覚悟しておくといい』
『おばあちゃんが君の顔を忘れたりすること』

それ歌っちゃうの?
NHKの教育テレビで?

『orbital period』の頃のBUMPは、別にノワールな世界を歌い上げているわけではありません。昔のアルバム曲のほうが、描く世界はいっそ残酷だったかもしれない。『K』みたいに絵描きは飢えで死なないし、『グングニル』みたいに船が呪われたりもしないし、『Ever lasting lie』みたいに大切な人を忘れたまま油田掘ってる男もいない。ただただ、ごく普通の生活のなかにあるどうしようもなさを歌い上げ、それと同時に前向きに生きろと歌う。ひっどい。あまりにひどい、あまりに優しい。でも『才悩人応援歌』のなかで、しれっと「おめーのために歌った歌とかねーから、でもそれでも問題ないでしょ?」とか遠回しに言い放ってるんですよこのバンド。なに……この……なんなの……?

次の月に出た『HAPPY』も大概「BUMP明るい残酷物語」案件で、というかしばらく「逃げ場はないぞ、でも大丈夫だよ、進もうぜ」という曲が次の6thアルバム『COSMONAUT』あたりまでごろごろ転がるようになりました。、7thアルバム『RAY』あたりからはタイアップ系の楽曲や、抽象度が高い曲が増えはじめた印象があります。この辺りになると「あー、BUMPがまた稼いでいる……よかったね……美味しいものたくさん食べるといいよ……」という気持ちの方が強くなって、以来少し距離を置いた聴き方をしている次第です。

私にとってのBUMP黄金期は『orbital period』から『COSMONAUT』あたりまでの期間でした。大学生の頃、どうにもこうにもまともな生活ができなくて、ネットや大学で虚勢を張りながら、汚部屋のなかでずっと聴き続けていた音楽。自分のためにつくられた訳ではない、赤の他人の曲を聴きながら、なんとか動いている間に、いつのまにか十年以上経っている。その間に色々ありました。マイスイートハニー旦那さんと結婚したし、いまの会社で勤続記録を更新したし、お風呂の大掃除は褒められるくらいできるようになったぞ。そちらは色々大変そうですね、奥さんと子どもそっちのけでバンドメンバーに謝ってしまうどうにもならなさを迎え入れたあたりが、いっそBUMPらしいなとけらけら笑いながら曲を聴いています。今年も紅白出るんですね。やっぱり曲目は『なないろ』でしたか。昔みたいにのめりこむような聴き方はしていないけど、やっぱり私はあなた方の曲は好きです。これからどんな曲を書くのか、どんなふうに変わっていくのか、遠くから勝手に聴いて、勝手に解釈して、笑っていると思います。

そちらに覚えはまったくないでしょうし、別に届くとも思っていないですけれど。
有難うBUMP OF CHICKEN。
その曲はたしかに私の青春だった。

いまでも時々『モーターサイクル』を聴きながら仕事をしています。


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