• はこにわのつくもがみ

屋敷守りの子どもたち

  • くりつる
  • へしさに
  • 捏造
  • 不仲な男士有
  • BL表現有
  • 短刀

 夜、大きな体の付喪神たちが寝静まった頃。その声はひそやかに、部屋の外から彼女を呼んだ。
「あるじさま。あるじさま」
 その日の晩はよく晴れていて、なめらかな盃を思わせる満月が、障子戸越しに天狗の影を部屋に落とした。もちろん審神者は誰が来たのか、見るまでもなく理解する。
「もうおやすみでしたか? あるじさま」
「いいや。まだ起きてるよ、いまつるや」
 審神者が寝ていないことも、彼には分かっていただろう。彼女がそう答えても、驚いた様子はない。
 短刀の付喪神は宵っぱりだ。
 子どものような見た目故に、彼らに早寝を促す者は多い。彼らの方も誰かに夜更かしを窘められれば、その愛らしい顔で素直にごめんなさいと謝り、いそいそと布団に潜る。が、他の者が寝静まったころにそっと起きだし、各々の好きに過ごしているのを審神者は知っていた。彼女以外にも脇差や打刀の付喪神達はそのことを知っているらしかったが、太刀の面々のようには咎めない。己らより短刀達の方が、ずっと夜に強いことを知っているからだ。理屈は分からぬが、そういうものであるらしい。
「あやつらは人の寝所にも持ち込まれる刀であるからなあ」
 いつか三日月宗近がそう語っていたのを、審神者は思い出す。「昼と夜の区別なく、人を守るための刀だ。むしろ他の者がおらぬ夜こそ、あやつらの勤務時間というやつなのかもしれんな」
 そういうものかもしれない。平安より生きる美しき太刀の付喪神の話を聞いて以来、それまで口を出すべきかどうか悩んでいた短刀達の夜明かしについて、彼女は心配しないことにした。人の似姿で生きていようと、彼らは人ならざる者である。違う生き物がそれぞれの道理で生きているのであれば、それで問題はないのだろう。
 そして話は変わるが、ここの審神者もまた、人にしてはだいぶ宵っぱりの部類である。
 現世で暮らしている頃から、彼女には少々不眠のきらいがあった。この屋敷で暮らすようになってからは出来るだけ決まった時刻に休むよう心がけてはいるものの、寝付けない日も多い。起きだしてそっと明かりを灯し、書類仕事に手を出しては近侍のへし切長谷部を困らせている。
 審神者が夜更かし屋であることを、短刀達も当然知っていたのだろう。――彼らの集まりに呼ばれるようになるまで、そう時間はかからなかった。
「きょうもみな、あつまっています。いっしょにたのしみませんか、あるじさま」
 障子越しに天狗姿の影が誘う。
 こういう時に、彼女が彼らが人でないことを見せつけられる心地がするのだ。
「……せっかくだから、お邪魔しようかな」
「ええ! それじゃあいきましょう、あるじさま。みな、あまいものをよういしてまっていますよ」
 ふ、と審神者は小さく微笑み、立ち上がる。
「それはそれは、楽しみだ」
 誘いを断る理由など、彼女にはない。
 
 
 
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 付喪神には、人の似姿を得ていたものと、そうでないものがいる。そのことを審神者に教えたのは、彼女の本丸に顕現している短刀の付喪神たちだった。
「みんなはどちら側だった?」
「ぼくはかたなのままでしたね。岩融もひとのすがたはもっていませんでした」
「前田と平野、それから俺も持ってなかったよなあ。平野はその後どうかは知らねえけどさ」
「はい。前田の御家では僕らと平野は、人の姿を取っていませんでした」
 真っ先に今剣と愛染国俊、それから前田藤四郎が彼女の投げた問いにこたえる。今剣は言いながら、目の前にある月餅に手を伸ばしていた。いつの間にため込んだのか、けっこうな量の菓子が短刀達の前に広げられていて、その傍らには大吟醸と書かれた瓶が数本。もちろん飲むのは彼らである。酒を好まぬ秋田藤四郎や未成年である審神者は薬草茶を飲んでいるが、他の者達の手元には、なみなみと注がれた盃がある。時折勝ち祝いで行われる宴では大人しく甘いジュースやお茶の類を飲んでいる短刀達だが、夜こうして空き部屋に集まる時には、当然のように飲み交わす。知らぬ者が見れば卒倒しそうだと審神者は思うが、今まで短刀以外の者がこの集まりに顔を出したことはない。
「ふむ。いまつると、あいちゃんと、前の三人は違うのね」
 つぶやいた審神者に、続けて答えたのは薬研藤四郎だ。
「今ここにいる兄弟には、手足を持ってた奴はいないと思うぜ? 大将」
「そうなんだ。……あっくんや。黒田のおうちで長谷部といっしょだったことってある?」
「あ? んー、まあ一応はな。黒田の所に居たのなんてほんの数年だけどよ。……ああ、長谷部のやつは、足で歩いてた側だったな」
「あー、成程。やっぱりか」
 得心がいったというふうに頷く審神者に、首を傾げたのは五虎退だった。従えている仔虎の一匹を膝に乗せたまま、その虎によく似た瞳で彼女を見上げる。白く細い指は膝の上の虎をやわく掻くように撫でていた。
「主様、やっぱりっていうのは、どういうことですか?」
「いや、長谷部だけじゃないんだけどね。君たちとちょっと雰囲気の違う奴がいるなーとは前から思ってて。今その話聞いて、もしかしたら人の姿をしていたかどうかの違いなのかなーと」
「そうなのか大将」
 相変わらず目が良いな、と薬研が言い、他のものたちも興味津々といった様子で目を大きく見開いて、審神者の方をぱっと見た。これだけ見ていると、まるでただの子どものようだと審神者は思う。これだけを見ていると。
「それじゃあ大将は手足があった奴の区別がつくのか?」
「うーん、多分ねえ」
「では、他にはどなたが人の似姿をお持ちだったのですか?」
「ぼくはほかにもなんにんかしっていますから、こたえあわせもできますよ!」
「今剣さんもそういってるし、教えてよ、あるじー」
 短刀達に囲まれた年若い審神者はふむ、顎に手を置き『雰囲気の違う』面々を思い起こしながら、ゆっくりとその名前を挙げていった。
「まずは、長谷部でしょ。それから……うん。石切さんと、たろさんじろさんはそんな感じがする」
「おお! たしかに石切丸は、まえからひとのすがたをしていたとはなしていました!」
「ていうか、君と岩さん以外の三条はそうなんじゃない? 小狐丸は知らないけれど」
「あは、ばれてしまいましたね! あるじさまのいうとおり、三条のかたなでてあしをもたなかったのは、ぼくと岩融のふたりだけです。小狐丸もあるくつくもがみだったと三日月がいっていました」
「あー、……なら他も間違っちゃいないかな? お清はよくわかんないんだけど。しっしーと、にかっちと、それから倶利伽羅は歩いてた側だと思う」
「大倶利伽羅さんもですか?」
「……大倶利伽羅も、間違いないよ」
「そういう小夜坊も歩いてた側だよね」
「えっ、そうなんだ?」
「……ああ。主の言うとおり、僕も前から、今と同じかたちだったよ」
 小夜左文字のことばに藤四郎の短刀達がきゃあきゃあと盛り上がるその傍ら、己の予想が大きく外れていないことを知った審神者は、改めて本丸の付喪神達がそれぞれどちら側であったかを確かめていた。
「だけど大倶利伽羅さんが手足を持っていたのは、何だか意外です」
「僕は光忠さんが手足生えてなかったっていうの意外だなー」
「そうか? 燭台切の旦那はともかく、竜の旦那は生えてた側だろうと思ってたぜ。むしろ長谷部の旦那の方が意外だな。あいつ黒田の家で足生やしてたのか」
「手足が生える……」
 審神者がその表現に難しい顔をしていても、短刀達は気にすることなく話をしている。こういう時にも彼女は彼らが人でないことをしみじみと感じるのだが、それは余談だ。
 きゃあきゃあと、それでいて部屋の外には響かぬようなひそやかな声で交わされる短刀たちの話を薬草茶を飲みながら聞き、時折それに己も混ざる。審神者にとって短刀達の話はとても有用だった。本丸に呼び降ろした彼らと付き合っていくに当たって、彼らの関係や心情を知りすぎて困るということはない。誘われれば彼女は必ず、この集まりに参加した。それに、見る者によっては目眩を起こしそうなこの酒宴に呼ばれるということは、この愛らしくしたたかな付喪神たちに、いくらかは認められているということだろう。そう思えば断る理由は彼女にはない。
 
 ともあれ、彼女は短刀達から話を聞いて、確かめて。そのことを知っていたのだ。
 
 
 
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「薬研の兄貴や」
 審神者に呼ばれ、彼女がなんとも形容しがたい表情をしているのを見た薬研藤四郎は、片眉をひょいと上げながら笑いそうになるのを押し込め堪えた。また何かに気がついたのか。この主がこういう顔をする時というのは、彼女曰く「知りとうなかった」ということを察してしまった時である。快、不快の話ではなく、ただ今後のことに頭を抱えていたり、反応に困っているだけなあたり、この審神者は寛容な部類だと薬研は思っていた。
「どうした大将」
「いやあ……君、前にさあ、倶利伽羅が人の手足持ってたの納得、みたいに話してたよね?」
「? おう。それがなんだ」
「……その……何でそう思ったのかとか、聞いてもいい……?」
「……ははあ」
 成程な、と得心した薬研の顔を見ただけで、審神者には分かってしまったらしい。あっ、と気づいた顔をして、次いで「うわあ」と声を漏らした。確かにまだ若い彼女には、少々扱いに悩む話題だったろう。どうにも長谷部とは良い仲らしいこの娘だが、閨事の経験がないのも見て分かる。耳年増な所もあるが、身近な者の生々しい事情となると、飲み込むのに少々時間がかかるのだろう。可愛らしいことだと薬研は隠すことなく小さく笑った。
「もう大将も勘づいてるみてえだが……どうも竜の旦那は、筆おろしを済ませてる気がしてたからなあ」
「……やっぱりそういう理由なのね、うん……」
 彼女は隠そうと思えばいくらでも表情を隠せるし、作れる。しかしそうしようと思わぬ限りは、その微妙な顔つきの違いだけで心の内をよく語る。今も例の「知りとうなかった」という顔で、どこか遠い所を眺めながら乾いた笑みを貼り付けていた。人の身で察しが良いというのも中々大変らしい。
 付喪神に房事の経験がある者は少ない。
 少なくとも人に似た姿で人のようにまぐわった経験のある者はあまりいない。人の似姿を持たなかった者が多いし、持っていたとしても同じく人型の相手がなければ交わりのしようがない。薬研を含む短刀の付喪神も、他の連中に比べればかなりそれらを見聞きしている部類だが、実体験があるかといえば別の話だ。
 明確な違いがあった訳ではない。ただ、大倶利伽羅は他人の肌を知っているのではないかと、薬研はなんとなしにそう考えていたのだ。
「竜の旦那のすみに置けねえよなあ」
「……うん、いや、まあ、前から誰か、会いたい人がいるのかなとは思ってたから、うん。そういうこともまあ、あっても納得はするんだけどね……」
 それは短刀達みなが思っていたことでもある。他の付喪神から距離を置き一人で過ごす寡黙な太刀が、時折物憂げな目で何かを思い出すように、庭の花を眺める、その姿が誰かを恋うているようだと言ったのは誰だったか。相手はヒトか、それとも化生か。大倶利伽羅の想い人については、短刀の付喪神達も皆気になっている話題のひとつであった。
「で? そんな話が大将の口から出るくらいだ。何かあったんだろ?」
「何かあった、という訳じゃないんだけどねえ。相手に察しがついたから話を振ったら、思ってた以上に、こう……仲がよかったみたいというか、デキ上がってたのを悟ってしまったというか……」
「へえ。それじゃあ何だ、すると竜の旦那と懇ろだったのは、俺達みたいな付喪神か」
「兄貴も察しが良いよねえ……ああ、君も知ってるかもしれないや。演練でも何度か見かけたし」
 鶴丸国永。織田の家にもいたでしょう?
「……へえ?」
 
 審神者が口にした名前は、へし切長谷部に足が生えていたという話と同じくらい、薬研にとっては意外なものだった。
 
 
 
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「大倶利伽羅のおもいびとは、国永のたちだったんですね」
 盃のなかの酒を揺らしながら今剣が小さく笑う。今宵の宴には審神者を呼んでいない。いま此処にいるのは間違いなく短刀だけだった。
「国永の太刀……今剣は鶴丸国永を知ってるんだな」
「ちょくせつあったことはありません。ただ、五条国永はぼくたちをつくったこかじ、三条宗近のでしにあたります。いぜん三日月がはなしていたのでしってるんですよ」
「僕は、一度会ったことがあるよ。平成の頃に、江雪兄さまと一緒に展示されたことがあるんだけれど、その時に彼もいたから」
 寡黙と思われているところがある小夜左文字も、この集まりではよく喋る。己に視線が集まっても気にすることなく話を続けた。
「三日月や他の人達と話しているのを、少し見ただけだけれど……そうか。大倶利伽羅は昔から、誰かを想っていたみたいだったけれど……彼だったんだね」
 復讐の念に苛まれるこの短刀は、現世では大倶利伽羅と同じ場所に所蔵されているのもあって、他の者よりいくらか彼と親しい。
「しかしなあ、鶴丸の爺さんは信長公の所で少し一緒だったが……誰かと懇ろになるような御仁には見えなかったぜ。愛想が悪いってわけじゃあなかったが、そうだな、どこか人を嫌っているように俺には思えた」
「僕が見た時には、あまりそんな感じはしなかったけど……」
「……ねえねえ、僕ちょっと分かっちゃったかも!」
「なんだよ乱」
「大倶利伽羅さんってえ、伊達の家じゃ嫌われてたみたいじゃない」
「確かに見ていると、そう思える所がありますね」
「きっとひとりで過ごすようになったのって、それが原因でしょう? なら伊達の家でも、大倶利伽羅さんの周りって、誰もいなかったんじゃないかなあ」
「……ああ、つまり他の奴らを避けるために、大倶利伽羅の傍に行ってたってことか?」
「……」
「…………」
「……そしてほだされた、か?」
「可能性はあるな」
「大倶利伽羅さん、とても良い方ですものね……」
「ひまだからとわかいりゅうのこをおもしろがってつついているうちに、ほんきになったというのもありえますよ!」
 今剣のことばに、短刀達の間にしばし沈黙が落ちた。考えることは皆等しいだろう。誰かがぽつりと口にした。
「光源氏……」
「若紫……」
「爺さんの教育の賜物、か……」
「……薬研兄さんと、あるじさまの話を聞いてると、房事まで教えこんでる感じがしますよね……?」
「……」
 どっちがどっちだ、という下世話な話は皆飲み込んだ。鶴丸国永が来れば分かる。
「……平野といち兄、早く来るといいのになあ。鶴丸さんの話、僕すっごく聞きたい」
「……鶴丸さんが伊達を後にした後もずっと、大倶利伽羅さんは鶴丸さんのことを想っているんですね」
「なんというか、健気だよね」
「……それ、光忠さんはご存知なんでしょうか……?」
 五虎退の言葉に、盃や菓子に伸びていた皆の手がぴたりと止まる。全員の視線が五匹の虎を侍らせる細い短刀の付喪神に集まった。
「光忠さん、大倶利伽羅さんのこと、嫌ってますけど、なんていうか……その分、特別に思ってますよね」
「……だね」
「あの……鶴丸さんが本丸に来たらその……ちょっとまずくないです、か?」
「……」
「……」
「……」
「……まずい」
「まずいな」
「まずいでしょうね」
 ――燭台切光忠について、短刀達は『愛されてきた美しき』、そして大変『愛らしい』太刀であると思っている。荒々しい武の気質を持ちながら、己に号を与えた人の名をなぞるように伊達者としての立ち振舞を己に課す、美しき太刀。手足を得てなおそのこころは刀の有り様を失わず、血肉の通った人の情を解さないまま、人に倣うあわれな化生だ。その在り様は人に寄り添ってきた短刀達にとってはむしろ愛おしく、だから彼らはその剛と美を兼ね揃えた太刀相手にはいっとう子どもらしく振る舞った。
 その燭台切光忠は、その華やかさ故に織田や徳川から求められ、家を転々とした過去を持つ太刀である。己が求められる側のものであると彼は知っている。それ故に彼は大倶利伽羅を妬み、そして執着しているところがあった。己と同じく伊達政宗から名をつけられ、以後長くその家で過ごした無銘の太刀を、光忠は随分と気にしているし、大倶利伽羅もまた彼に対して劣等感と敵愾心を抱いている。そんな大倶利伽羅に、光忠が内心胸がすくような心地を味わっていることも、何となく短刀達は察していた。
「……大倶利伽羅がおのれをきにするのを、あたりまえとおもっている燭台切のめのまえに、だれよりもりゅうのこのめをひく鶴丸がくる……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……大将の耳にも一応、入れておいた方が良いかもな……」
 皆一様に、こくりと無言で頷いた。
 
 
 
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「ああ、うん。それは考えてる」
 薬研が審神者にその話をすると、間をおかずそう返事が返った。
「ほう。ちなみにその考えとやらを聞いてもいいか? 大将」
「とりあえず倶利伽羅には、鶴丸国永の話は他にしないように言ってある。で、鶴丸国永を探してたのは私、ってことにしようかなーと。実際に来るまでは何にも言わないけどね」
「そいつを信じる奴がいるかねえ……」
「それっぽい理由は考えておくよ。でも時間稼ぎにしかならないだろうねえ。そのうちなんか面倒事が起こるとは思ってる」
「騒ぎが起こるとわかっていて、竜の旦那を手伝うんだな」
 この本丸で岩融と石切丸、そして三日月宗近を呼び降ろした際に相槌を打ったのは今剣だ。関わりの深い者が手伝えば呼びやすい、というのは願掛けの類でしかないそうだが、審神者は大倶利伽羅を一軍に入れ、近侍にして。鶴丸国永の顕現を待っていた。
「そりゃあ、ねえ」
 ふ、と審神者が栗色の瞳を細める。
「あんなに焦がれているのを見たらねえ。来るなとはいえないよ」
「まあ、確かにな」
「それに、いい機会だと思うしね」
「……そりゃあ一体どういう意味だ、大将?」
「いや。こちらの話だよ、薬研。気にしないでいい」
 何も教えることなく小さく笑って、審神者はふらりとどこかに行ってしまった。
 
 
 
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 竜を飼う寡黙な太刀が、見慣れぬ白い影を連れて縁側を歩いている。
 短刀達は沸き立った。五虎退の白い虎が様子を伺う彼をよそにふたりの付喪神の元へ飛び出し、それを見た白い影が「おっ」という快活な声を上げて笑った。
 それを合図に、庭にいた短刀達がぱっと駆け寄る。
「おお? なんだなんだ」
「貴方が鶴丸国永様ですか?」
「おお、いかにも俺が鶴丸国永だ。君たちは短刀の付喪神か?」
 はい、と元気よく返事をしながら短刀達は彼らを眺めた。成程、並べば白と黒で似合いの二人だ。どちらがどちらだろう、という下世話な勘ぐりは表に出さずに、にこりと微笑む。
 
「まっていましたよ、鶴丸国永!」
 
 ぼくたちみんな、たのしみにしてたんです!
 
 目を輝かせた短刀達に、二人は顔を見合わせた。
 

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