• はこにわのつくもがみ

屋敷守りの子どもたち

  • くりつる
  • へしさに
  • 捏造
  • 不仲な男士有
  • BL表現有
  • 短刀
読了目安時間:19分

くりつる、へしさに有。しかし中心は短刀ズ。この本丸の短刀たちはなんだかちょっぴり妖怪気質。

1 2 3

「やあ、随分と歓迎されてしまった」
 ひとり縁側に座り桜を眺めていた審神者の元に、顕現したばかりの鶴丸国永が声をかけた。
「挨拶回りはひと通り終わったかね、鶴さんや」
「ああ。皆良い子達ばかりだな。こんなに賑やかな場所に来たのは久しぶりだ、ついはしゃいじまった」
「それは重畳。何かあったら遠慮なく言ってくださいな」
「ふふ。君は良い主のようだな。皆きみのことを快く教えてくれた」
「おや」
「大倶利伽羅のことも随分と気にかけてくれていたらしいからな。俺からも礼を言おう」
「……えっ、惚気にでもきたの鶴爺さん」
「はは、いやいや、そんなつもりはないんだが……君も知ってるんだなあ」
「短刀の誰かに聞かれましたか?」
「ああ。……あの子は奥州じゃあ寂しそうにしてたからなあ。ここで皆に囲まれているを見るのが嬉しくてな」
「昨日までは此処でも寂しそうは寂しそうでしたヨ」
「……やれ、君は人を喜ばせるのがうまい」
 照れたように頬を掻いた鶴丸は、しかしすぐにすう、と微笑む。
「君は随分と、俺らに心を砕いているようだな」
「そう見えますかね」
「いや、皆が話しているのを聞いていたくらいだがな。御上からの仕事はそこそこにしかこなさないが、よく見て気を使う主だとさ」
「そう思ってもらえているなら有り難いけどね。……まあみんなの言う通り、あんまり真面目に進軍はしてないから、物足りないかもしれないけどそこは許してくださいな」
「それはまあ君の采配だからな。文句は言わないが、不思議ではある。話を聞いてるとけして不真面目には見えないが。任務は適当なんだなあ」
「あんまり信用してないからね」
 ぷつり、と流れるように続いていた会話が途切れた。ひらり、とふたりの間に花びらが落ちる。
「倶利伽羅にも話したことはあったかな。私はなんというか、この戦争自体を信用してない」
「……驚いた。そりゃ敵の……歴史改変主義だったか? あちらに付くするつもりがあるってことかい」
「そうじゃないよ。まあ、過去を変えられたらと、思わないわけでもないけどねえ」
「……」
「だからこそ、この状況が分からない」
「……それは俺が聞いてもいい話なのか?」
「結構この本丸のみんなには話してるよ。……君たちは長い時間を生きているものだから、分かりにくいかもしれないけどね。私がもし過去を変えるなら、せいぜい自分が生きてきた中で、悔いている時間に飛んで未来を変える。生まれる前の世界なんて、どんな影響が出るのか想像がつかないから。……あまりにも、時代を遡りすぎてる気がするんだ。それも古い時代に行けば行くほど、力の強いものたちが送り込まれている……まるで私には、過去を変えたいと願うものたちを利用して、まったく別の意図で動いてる何かがいる気がしてならない。だからこの戦争のはじまり自体を疑っている。そもそも、改変されたことを知る手立てが私達にはないはずなんだ。正しい歴史を知り、歴史の改変を観測しているものはどこに?」
「…………」
「そういうわけだから、本丸の中の人間関係だけは良好に保っていたくてね。……今後、何が起こるか分からないから。君たちだけは味方でいてほしい。そのための努力は惜しみませんよ」
「…………」
「だから、何でも言っておくれよ、鶴丸や。できるかぎりはかなえるからさ」
 
 代わりに修羅の旅路の道連れになれと含ませながら、少女はゆるりと微笑んだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


1 2 3

ページ上部へ移動