記憶の中の彼女はいつも美しかった。
いつでも朗らかに笑い、誰に対しても分け隔てなく気さくに声をかけているようでいて、その実ほかの誰よりも高い矜持と冴え冴えと冷えた思考でものを見ているような少女だった。ひとたび人の輪から離れると、それを外側から静かに眺めているような。そのくせ時折、ふいに歳相応の子どものような表情をする。
腰の辺りまで伸ばした長い銀色の髪が、風や彼女の動きに合わせて扇のように広がるのが好きだった。陽光を弾き、つむじを囲むように出来た光の帯がゆれる様子を、後ろから眺めてばかりいたような気がする。
あの日のことを、今でもはっきりと思い出せるという事実が彼には恐ろしい。
七月、夏の日差しが彼女の髪に、絹のような光を散らしていた、あの日。
またな、廣光。
そう、あの男の隣で手を振った彼女に、彼は一言、ああ、と嘘をついた。
嘘をついて離れた日のことを。忘れられない夢のように、今もまだ覚えている。
- 夜明けを願う祝ぎの庭
夜明けを願う祝ぎの庭 3
- BL表現有
- 燭鶴
- パロディ
- くりつる
- 不仲な男士有
読了目安時間:21分
なんでもありのハリポタパロ第三話。そんな顔はずるい、とのちに彼は言った。