冬休みの話
「驚いた、今の魔法薬学じゃあ、火加減の練習からさせられるのか!」
久しぶりに帰った家で国永の話を聞いた母は、ころころと楽しそうに笑い続けていた。
「昔は入学してすぐにおでき薬から作らされたもんだったが、いやあ、いい先生みたいだなあ。母さんは友達に餅の茹で方を教えられた」
「友達?」
「ああ。私は魔法薬学が苦手でなあ。あんまりだと見かねた友達が、わざわざ寮まで教えにきてくれていた。いやあ、懐かしいな」
「その友達っていうのは、もしかして伊達廣光っていうんじゃないか?」
国永の言葉に母が固まる。ついでに横のソファに座っていた父まで隻眼を見開いてこちらを向いている。はて、何かまずいことを言っただろうか。国永がそう思ったところで、出した言葉は今更引っ込められない。
「どこで、その名前を知った、国永?」
「……その魔法薬学の先生が。伊達先生だぜ、お母様」
息子の言葉に母はぽかんと口をあけ、ゆるりとあげた掌でその口元を覆い隠した。
「……そいつは、驚いたな……」
本気で驚く母を見るのは久しぶりだった。